私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっています議案18件中、議案第1号、第2号、第6号、第9号の4件に反対、残余の議案14件に賛成の立場から討論を行います。

 議案第1号 一般会計補正予算に反対する理由の第1は、ICT活用戦略推進事業費として6,000万円が追加されるからです。この予算は、情報通信技術、いわゆるICTの官民による活用を促進するため、複数の分野にわたる実証実験を行うとともに、そこで得られたデータ等を収集し、連携する共通基盤の構築をしようとするものです。
 委員会でも取り上げましたが、2013年6月、JR東日本がスイカの乗降履歴を日立製作所へ販売すると発表し、大きな問題となりました。
 JR東日本は、スイカのIDは、個人が特定できるようにはなっていないので個人情報には当たらないとして、私鉄を含む首都圏約1,800駅の範囲で、ID番号ごとに生年月、性別、乗降駅、利用日時、利用額のデータを日立製作所に販売、日立はこれを基にデータを解析し、広告や出店計画に使う予定でした。
 しかし、個人の行動記録が売買の対象になったこと、事前同意もなかったことへの不安や批判の声はすぐに炎上と言われるほど広がりました。
 2015年、本市が行った「ICTの活用に関するアンケート」でも、情報化施策で札幌市が注意すべき点として「個人情報やプライバシーの権利を保護すること」と答えた市民は76%に及んでいます。
 このことからもたとえ匿名化処理をしても自分の行動記録が知らないうちに企業の利益のために売られ、マーケティングに活用されることに対して、市民が不快感や気味の悪さを禁じ得ないのは当然のことです。
 2016年12月、国会で「官民データ活用推進法」が成立しました。この法律のねらいは、産業界の要望に沿い、国や地方公共団体が保有する膨大な個人情報を民間企業が活用することができるようにすることで、新たなイノベーションを起こし、企業が利益を上げられるようにすることにあります。
 国会審議では、この法律で活用しようとする官民データは、個人情報保護法に基づいて匿名化処理をすることから、個人情報漏えいの心配はないと国は説明しています。しかし、インターネットの急速な発達により、多様な情報が公表・提供される中、その情報を照合する技術も日進月歩です。
 特に最近では、複数の情報を照合することが比較的容易に行うことができ、特定の個人を識別できる可能性を指摘する専門家もいることから、匿名化処理された情報であっても、個人情報に該当する可能性が高まっている傾向にあると言えます。
 マイナンバーなど、全国で情報漏えい事故が後を絶たないのに、個人情報を厳格に保護する具体的な対策と技術根拠があいまいなまま、官民で個人情報の利活用を推進していくことは個人の権利や利益の軽視であり看過できません。
 本市は、全国に先駆けてICT活用の先頭を走る存在、すなわちトップランナーを目指すとしています。
 本市の「ICT活用戦略」は個人情報保護や権利利益を守ることよりも、企業が利益を上げることを優先し、そのために行政が保有する情報を活用しようとするもので市民の理解を得られるものではなく反対です。

 反対する理由の第2は、介護保険のシステム改修費として一般会計から9,400万円、国庫補助として500万円、計9,900万円が追加されるからです。
 今回のシステム改修は、2018年から2020年度の介護保険事業計画の策定や2018年度の介護報酬改定、今国会における介護保険法の改正等に伴うもの、としていますが、どのような改正内容となるかの具体的なものはまだ示されていません。
 国は「介護療養型医療施設」から、新たに創設しようとする「介護医療院」へと移行させ、長期療養病床における人員の配置基準のルール緩和などを狙っており、サービスの質の低下が懸念されます。
 また、利用料では、「一定の所得がある利用者のサービス利用料を2割から3割へ」と国民の負担増が計画されており、国の推計を当てはめれば、本市でも2,400人から3,000人程度の方が3割負担になることが明らかになりました。
 介護保険制度がスタートして17年になりますが、利用料の1割から2割への値上げ、介護報酬単価の切り下げ、要支援1,2の介護保険制度外しなど見直しの都度、改悪が行われてきました。これ以上の給付抑制と負担増となれば、低所得者、独居、老々世帯などの市民が必要な介護サービスの利用からいっそう遠ざけられ、制度から排除されてしまうことが懸念されます。まさに保険あって介護なしという事態を拡大するものと言わざるを得ません。
 今回のシステム改修は、この路線に道をつくるものであるため、反対します。
 よって関連する議案第2号にも反対です。

 次に、議案第6号 市税条例の一部を改正する条例案についてです。
 市長は、法人市民税について「法人税割の一部を国税化して、創設された経緯がある地方法人税の税率引き上げに伴い、法人市民税法人税割の税率引き下げを行うものである」と、議案を提案しました。しかし、本市は「国の施策及び予算に関する提案」の中で「これらの減収分については、国の責任において、地方交付税の法定率を引き上げることで対応すべきである」と、指定都市として国に要望しており、矛盾するものです。
 そもそもこの条例改正は、2019年度に行われる消費税の10%引き上げに合わせて、法人市民税の法人税割を、現行の9.7%から6.0%に3.7%引き下げるもので、地方自治体の自主財源を削減するため反対です。これによって本市で65億円の減収になりますが、それが交付税措置される保証はありません。
 政府は法人税割の引き下げ分を国税として徴収し、税源の薄い自治体に厚くするなど再配分するとしていますが、自治体の自主財源を削減して地方交付税に充てるなど極めて問題です。
 また、この改正は、消費税を地方財源に据えていく狙いと一体のものであり容認できません。

 次に、議案第9号 保護施設条例の一部を改正する条例案についてです。
 生活保護法に基づく保護施設「あけぼの荘」の定員を、現行100名から90名に減らすための条例提案です。
 現在の入所者数は89名で、「近年ほぼ横ばいであるため現状に合わせて定員を引き下げる」、との説明でした。しかし、全道にある同様の施設の入所は98.7%で、全国の入所率は、全国救護施設協議会による2013年度の調査では100.3%と、ほぼ満員の状態です。
 貧困問題が全国的に深刻であり、また、障がいを持つ方々も増加傾向をたどっています。そのような中で、こうした救護施設への需要が減ることは考えにくく、定員数を引き下げれば、入所できない人が出てくる可能性があるため、反対です。

 以上で私の討論を終わります。