私は、日本共産党を代表して、議案第1号「令和3年度一般会計予算中関係分」、議案第5号「令和3年度札幌市国民健康保険会計予算」、議案第7号「令和3年度札幌市介護保険会計予算」を撤回の上、再提出を求める動議の提案説明を行います。

 提案内容の第1は、大型開発や市民合意のない事業等にかかわる歳出の削減です。
 その1点目は、創成川通機能強化検討調査費の300万円です。
 1月の都市計画審議会では、議論が尽くされていない等の意見が続出するなか、「保留」の態度も認めるという異例の採決となり、出席委員22名のうち7名が反対または保留の意思を示しました。市民の意見や疑問について、ほとんど議論されないまま進められ、3月10日に開かれた国による社会資本整備審議会で、「妥当」と判断されるに至っています。このまま建設が決定されれば、総事業費は1200億円以上にも及び、将来にわたって大きなツケをまわすことになります。
 2点目は、北海道新幹線推進関係費の27億7100万円で、これらは、札幌への延伸工事に伴う負担金等です。
 当初は、2035年開業で進められた工事を5年前倒ししたことで、トンネル掘削工事で出る有害残土の処分地や処分方法も決まらないまま着工され、受け入れ候補地となった周辺の住民から、強い反対の声があがっています。環境破壊や健康被害への懸念が払しょくされないまま事態が進めば、市民はいっそうの不信感を強めることになり、市政運営上、重大な事態となりかねません。また、駅舎など基本的な施設は、国と鉄道運輸機構が負担すべきです。
 北海道新幹線の札幌延伸は、いったん工事を凍結するなど、立ち止まるべきです。
 3点目は、札幌駅交流拠点まちづくり推進費の9億9500万円です。
 北海道新幹線2030年札幌開業にあわせた完成が大前提とされる事業で、「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発準備組合」の負担金を、JR北海道、札幌駅総合開発、JRバス、JR北海道ホテルズなどと折半するものです。
 再開発完了後に、ビルの保留床の売買益で補おうとするものですが、北海道新幹線の黒字化そのものが見通せず、その延伸効果は極めて不透明です。また、感染拡大を防止する観点からテレワークが推奨される時代を迎えた中で、オフィス需要だけが変わらず「保留床の売買益が見込める」との保障はありません。事業そのものを見直すべきです。
 4点目は、丘珠空港関連調整費の1億2583万円です。
 「丘珠空港の将来像」によると、空港と都心を結び、インバウンドによる利用客を呼び込む開発計画で、利活用を図ろうとしています。大量の人を高速で移動させる交通手段のあり方が問われるウイズコロナの時代において、描く将来像がふさわしいものかどうか、再検討が必要です。
 また、1996 年に生活環境の悪化を懸念する住民の反対で「不可能」とされた滑走路の延長を盛り込んだままでは、住民の不信感は募る一方です。計画を見直すべきです。
 5点目は、民間再開発促進費53億5000万円です。
 今から9年前の2012年度時点で実施されていた民間再開発事業は、琴似と手稲本町の2つで、総事業費108億、本市の補助は約8億3000万円でした。しかし、9年後となる次年度の予算は、総事業費が約1000億円で、本市の補助は6倍以上の53億円に膨れ上がっています。いずれも都心部に集中し、再開発を急ぐあまりか、その手続きのあり方に地権者からも疑問の声があがり、住民訴訟に発展している例もみられます。本市が発行した「令和3年度予算の概要」に、「約1000億円の投資を誘発!」と記載されていることは、再開発が公共的な位置づけではなく、投資という位置づけであることが明瞭です。
 市民は、支払った税金を投資と誘発に振り向けるやり方を望んでいません。再開発についても手続きのあり方をしっかり検証し、補助のあり方についても見直すべきです。
 6点目は、富裕層受け入れ環境整備費9600万円です。そのうちの400万円は、富裕層向けのホテルを誘致するための事業ですが、これは民間の力に委ねるべきです。インバウンドに頼る観光施策そのものを見直し、市内の観光業・宿泊施設が等しく潤うような施策に回すべきです。
 7点目は、東京2020オリンピック・パラリンピック開催費8億2300万円です。
 海外観客を見送っても、選手や大会及びメディア関係者、日本人観光客は開催地に集まり、感染リスクは高まります。医療機関が、国内の「第4波」に備えながら、こうした感染拡大の危険や世界的に流行している変異株に対処できるという保証はありません。
 五輪開催を崩さない日本の姿勢を、イギリス・タイムズ紙の日本特派員は、「人の命や健康をギャンブルにかけるようなやり方だ」と警告し、新聞通信調査会が5か国で実施した聞き取りによる調査では、「中止・延期」を求める世論が、アメリカや中国などで7割、国によっては9割を超え、アスリートを送り出す側も開催を望んでいません。
 差別を許さず、友情・連帯・フェアプレイというオリンピック精神を何よりも大切にするなら、本市として、開催を中止・延期するよう国に要請するべきです。
 8点目の冬季オリンピック・パラリンピック招致関連費ならびに、9点目のオリンピック・パラリンピック基金造成費についてです。
 北海道新幹線札幌開業の2030年に合わせて招致しようと、基金と合わせて4億8200万円の予算が計上されています。オリンピック・パラリンピックは平和と友好の祭典であり意義あるものと考えますが、市民の信を問うことなく、予算投入と基金造成が続くことには同意できません。開催の気運醸成や開催概要計画の更新にむけた調査・検討を行う費用を、コロナ禍で苦しむ市民の困難を取り除くことにこそ、予算を振り向けるべきです。招致に走るのではなく、いま一度立ち止まり、市民の意見を聞くべきではないでしょうか。

 提案内容の第2は、マイナンバーにかかわる歳出の削除です。
 マイナンバー制度は、国家が国民を管理・監視することが目的であり、ほとんどが国費によって交付税措置されるものです。個人の資産や健康状態など、極めてプライベートな情報を、漏えいの危険性が否定できないマイナンバーに結びつけることを推進する関係予算は、法定受託事務であっても、本市が主体的に判断し、市民のプライバシー権擁護の立場に立って削除すべきです。

 提案内容の第3は、PCR検査強化のための予算の確保です。
 その1点目は、療養型医療機関、入所型介護施設職員へのPCR検査の月2回以上の実施です。
 市長が打ち出した、医療機関や介護、障がい者施設の職員がおこなうPCR検査への補助は、関係者から歓迎されています。このPCR検査の頻度を月1回から2回程度に引き上げための予算を確保することが必要です。
 2点目は、今回対象とならなかった療養型医療機関以外、入所型介護施設以外の医療・介護等施設職員へのPCR検査の月2回以上の実施です。
 3点目は、変異株感染を防ぐための、検査の増強です。
 今月17日、医療機関や高齢者施設等で働く団体の方々が副市長と懇談し、PCR検査の強化を要望したと、報告会で聞きました。「自分たちが感染せずに元気でないと患者・利用者さんを守れない」と、検査の必要性を訴えておられます。これら検査の強化は、予防効果を発揮し、無症状感染者を特定、治療し、収束に向かうことができる道です。変異株による感染が拡大傾向のいま、一刻の猶予もならない事態ではないでしょうか。最優先に対応するため、早急な検査予算の増額を求めます。

 提案内容の第4は、医療・介護など福祉施設、低所得者層・小規模零細事業者への支援強化と、市民のくらしを支えるための予算の確保です。
 1点目は、医療・介護施設等への減収の補填です。
 医療機関や、高齢者、障がい者の福祉施設では、患者・利用者の命を守る最前線に立つ一方で、利用抑制が起き、著しい減収となり、賃金にも影響を及ぼしています。
 国が重い腰をあげようとしないなかで、札幌市が施設等への減収補てんを行い、支援をおこなうことが切実に求められています。
 2点目ならびに3点目は、持続化給付金の対象から外れる事業者等への給付金の支給と、住居確保給付金の対象から外れる個人事業者等への実施です。
 本市は、非正規労働者やひとり親世帯など低所得者層が多く、地域経済も中小企業が主役です。コロナ危機で困難に直面している、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主等に対して、国のメニューを補う形での家賃減免などの支援を本市が行うことを求めます。
 4点目は、総管理戸数を増やすための市営住宅の増設です。
 本市は、これ以上の市営住宅を増やさない方針ですが、低廉な家賃で住まうことができたなら、どれだけ多くの市民のくらしが助かることでしょうか。応募しても入れない実態を解消し、コロナ禍でいっそう厳しい暮らしを余儀なくされている低所得者層を支援するため、総管理戸数を増やす方向に切り替えることを求めるものです。
 5点目は、パートナーシップ排雪制度の地域負担分全額補助の実施です。
 本市がおこなう市民アンケートで、常に1位となる強い市民要望が、除雪に関することです。とりわけ、パートナーシップ排雪制度は、町内会等への大きな負担となっています。地域負担分の費用9億円を、除雪費として拡充することを求めます。

 提案内容の第5は、子育て世帯への支援強化のための歳出の増額です。
 その1点目は35人以下学級の全学年への拡大です。
 菅政権は、5年間かけて、小学生全学年の1学級あたりの人数を、40人から35人に移行させる法改正案を国会に提出しています。本市教育委員会も、小学3、4年生を対象に35人以下の少人数学級を導入する検討を行ってきましたが、結果的に2021年度は小学3年生のみとなり、しかも、新年度に1学級40人程度となる学級のうち、限定的に試行実施する、として、小学4年生以降についても先送りしました。
 対象を限定せず、小学3年生と4年生すべてを35人以下学級にするために、歳出の増額を提案します。
 本市の35人以下学級は、小学1年生は2004年度、小学2年生は2005年度、中学1年生は2006年度から導入されていますが、保護者・関係者は、国の施策を待たずに拡大してほしいと切実に願ってきました。秋元市長も2019年の市長選挙で「少人数学級の対象学年を拡大する」と公約に明記したのは、こうした世論に応えたものであったと多くの市民は受け止めています。
 少人数学級を中学3年生まで拡大する方針と計画を示し、市民の願いに応えることを求めます。
 2点目は、保育士の賃金引上げです。
 保育所の、国定義によらない待機児童の一刻も早い解消が求められています。本市は、保育士処遇改善策として、勤続年数3年、6年、9年目の保育士に10万円の支給を行っていますが、その時期にならないと支給されない仕組みであり、全産業平均賃金より約10万円低いとされている問題は解消されるものではありません。毎月の基本給として、全産業平均賃金に及ぶだけの引き上げができる、処遇改善策を求めるものです。
 3点目は、子ども医療費の対象年齢の中学3年生までの引き上げです。
 子どもの通院にかかる医療費助成は、お金を気にせず病院にかかる上で欠かせません。市長は、次年度に小学4年生から6年生までの拡大を行いますが、思い切って中学3年生まで拡大することは、保護者や関係者の願いであるばかりか、新型コロナウイルス感染が長引くなかで、子育て世帯の力強い支援になります。
 これまで本市は、1学年の必要額を約3億円と試算していますが、小学生と比較しても病気が少ない中学生は、もっと少なくて済みます。この機会に20政令市中14市が実施している中学生以上の水準に引き上げてはどうでしょうか。

 提案内容の第6は、国民健康保険料の子どもの均等割り軽減です。
 均等割は、人頭割という点で、多子世帯に負担が重く子育て支援に逆行します。国は就学前児童に限って2022年度から50%軽減するとしていますが、これを、本市が1年前倒しで実施することにかかる予算は約4600万円です。コロナ禍の子育て世帯への支援策として、実施することを提案します。

 提案内容の第7は、介護給付費準備基金からの繰り入れ増額による介護保険料の引き下げです。
 介護保険料は、報酬改定ごとに引き上げられ、制度創設時から比べ約2倍にもなっており、負担は耐え難いものになっています。
 介護給付費準備基金約90億円から47億円の繰入をおこない、介護保険料を据え置くとしていますが、さらに一歩踏み込んで、繰入額を増やし、引き下げるべきです。同基金は、前年度の介護保険会計で生じた剰余金が積み立てられたもので、原資は市民が支払った保険料です。基金の性格からいっても、引き下げることは可能です。

 新型コロナウイルス感染症から命とくらしを守る立場から、一般会計予算を組み換え、一般会計からの国民健康保険会計への繰り入れ、介護給付費準備基金から介護保険会計への繰り入れをおこなうべきであり、これら3会計の予算を撤回し、組み替えて、再提出を求めます。各議員のみなさまのご賛同を、呼びかけるものです。
 以上で、動議の提案理由説明を終わります。