2012110503 私は、日本共産党市議団を代表して、ただ今議案となっております意見書及び決議案について、討論を行います。
 まず、意見書案第10号「我が国の領土・主権に関する意見書」についてです。
 この意見書案が問題にしているのは、尖閣諸島と竹島であります。
 私ども日本共産党は、尖閣諸島・竹島、ともに日本の領土であると明らかにしています。
 まず、尖閣諸島についてです。
 尖閣諸島の存在そのものは、古くから、中国にも日本にも知られていましたが、領有を示す文献は全くない「無主の地」でありました。
 1885年日本人古賀辰四郎が、同島の貸与願いを日本政府に申請し、政府は、1895年、閣議決定で日本領に編入しました。
 古賀氏は、貯水施設、船着き場などを建設し、大正期には、羽毛採取のほか、鰹節製造、はく製製造などが行われ、最盛期には、200人近い人が居住していました。
 「無主の地」である尖閣諸島を、領有の意思をもって占有する「先占」は、国際法で認められている領土取得のルールです。
 中国は、1895年から1970年までの75年間、日本が尖閣諸島を領有していることに、一度も異議も抗議も行っていませんし、1953年1月8日付「人民日報」は、「尖閣諸島」という日本の呼び方を使いながら、日本領土に含めて紹介しました。
 国連アジア極東委員会が、1969年に、尖閣諸島のある東シナ海から黄海に、石油天然ガスの海底資源が豊かに存在する可能性を明らかにしました。
 中国・台湾が、尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは、1970年代に入ってからであります。
 中国が領有権を主張する根拠は、日清戦争に乗じて、日本が不当に尖閣諸島を奪ったということです。
 しかし、日本が日清戦争で、中国から割譲させたのは、台湾と澎湖(ほうこ)列島であり、尖閣諸島は含まれておりません。
 1972年、日中国交正常化の際、及び、1978年の日中平和友好条約の締結の際にも、日本政府は、尖閣諸島の領有問題について主張することなく、棚上げにしてきたために、結局、紛争の火種を残し、先送りしてきたのです。
 そして、現在も日本政府は「領土問題は存在しない」と、尖閣諸島についての話し合いを避けています。
 尖閣諸島をめぐる紛争の解決のために重要なことは、日本政府が、尖閣諸島の領有の歴史上、国際法上の正当性について、国際社会及び中国政府に対して、理を尽くして主張することです。
 次に、竹島問題についてです。
 こちらも日本領土でありますが、歴史的経過が複雑で、尖閣諸島とは事情が異なります。
 竹島は、日本海を航海する際の目標として、古くから日本人にも知られており、漁業の際にも利用はされていましたが、帰属は、文献上明らかではありませんでした。
 1905年に、日本人・中井養三郎氏が、アシカ猟のために、10年間の貸下げ願いを出し、同年、日本政府が閣議決定で、同島を日本領として編入しました。
 ここで、国際法上有効な「先占」が行われ、これ以来、竹島は日本領となりました。
 1952年、サンフランシスコ平和条約で、日本は、済州島、鬱陵島などは、朝鮮に返すことが決められましたが、この中に竹島は含まれていないのです。
 ところが、韓国政府は、1952年、一方的に「李承晩ライン」なるものを設定し、竹島を韓国領だと言い出したのです。
 問題を複雑にしているのは、日本の、韓国植民地化政策です。
 1904年、第一次日韓協約が結ばれ、韓国は、事実上外交権を奪われていたため、竹島の問題についても、異議があっても申し立てができない状況にありました。1910年には韓国併合が行われました。
 これらの植民地化の進行と、日本の竹島の領有の時期が重なっているため、問題が混同しやすく、複雑化しています。
 竹島問題で、韓国政府は「領土問題は存在しない」として、話し合いの場がありません。
 しかし、尖閣問題では、日本政府が「領土問題は存在しない」と言っているのです。
 どちらの問題でも、大事なことは、まず、領土問題で解決されていない問題があることを、それぞれが認め合うことです。
 そして、尖閣諸島、竹島、どちらも日本領有の正当性を、相手国にも、国際社会にも訴えることです。
 日本政府は、これまで、相手国にも、国際社会にも、道理を尽くして、歴史的経過を明らかにして、主張することはありませんでした。
 長年にわたり、問題を棚上げし、話し合ってこなかったため、時間がかかると思いますが、あくまでも、歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって、解決を図るべきです。
 尖閣諸島と竹島問題は性格が違い、解決方法も異なりますが、緊張を激化させるような行動は、双方が慎まないと問題の解決にはなりません。
 今回の「我が国の領土・主権に関する意見書案」ですが、記書き第2項で「領土・領海に関する体制の強化を図る」としていますが、もし、このようなことが実行されれば、日中間の緊張激化は必至であり、冷静な対応を求める立場から、反対するものです。
 次に、決議案第3号「2020年オリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会の東京招致求める決議」についてです。
 4年ごとに開催されるオリンピックは、世界中の競技者を一堂に集めて開催される偉大なスポーツの祭典であり、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれ、スポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することに大きな意義があります。
 先に行われたロンドンオリンピックは、スポーツのすばらしさと選手の”無限の可能性”をみせてくれ、世界に感動を与えました。
 パラリンピックの結団式では、土田和歌子選手団主将が「最高のパフォーマンスをめざし、被災地に勇気と元気を、日本に笑顔を届けたい」と決意を述べ、オリンピックでメダルをとった選手が帰国後、被災地を訪れ、大きな勇気を与えました。
 オリンピックとパラリンピックの意義は、高く評価するものですが、2020年の東京招致について、2点申し上げます。
 第1は、財政問題です。
 ニッセイ基礎研究所の2022年までの中期経済見通しでも、消費増税は景気悪化による税収の落ち込みと相殺されるため、この先10年間の実質GDP成長率は、わずか1.1%との険しい見通しを示しています。
 今後10年間の長いスパンでみても、低成長のつづくであろう日本経済の先行きからも、財政的負担を将来の世代に残すことは問題です。
 第2は、震災復興を最優先することです。
 大震災から1年7カ月が経過しましたが、復興の最大の課題は、生活と生業(なりわい)の再建、安定した住宅の確保です。しかし復興対策は、あまりに遅く、不十分であり、被災地の復興こそ最優先に取り組むべきです。
 いま最優先で行うことは、国民生活を支えることと被災地の復興であり、東京都民が望んでいる訳でもないオリンピック東京招致を札幌で決議する必要はなく、反対いたします。
 以上で私の討論を終わります。