私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております議案35件中、議案第1号、第16号、第21号、第30号及び第31号に反対、残余の議案並びに陳情第143号・第144号・第145号の3件に賛成の立場から討論をおこないます。
 議案第1号に反対する理由は、「スマートシティ推進費追加」が含まれているからです。
 スマートシティ推進のためには、個人情報となる「個人データ」、「健康データ」などを、取得・活用できるかが重要となります。新たに、札幌市公式LINE等で、市民がAI利用に同意することで、個人の情報が官民データ流通促進基盤に蓄積され、そのデータを民間と共用することになります。今後、対象データや地域を拡張しながら推進すれば、情報漏洩の危機がいっそう増すことは明らかです。
 個人情報の漏洩防止の対策を講じるとのことですが、もともと個人情報の漏洩を完全に防ぐことはできないことから反対です。
 議案第16号「札幌市保護施設条例の一部を改正する条例案」に反対する理由は、90人の定員を75人に、近年にない削減幅になるからです。施設整備に伴う定員の変更にあたっては、市の公的施設としての役割から、慎重であるべきです。
 議案第21号「札幌市病院事業使用料及び手数料条例の一部を改正する条例案」は、国の制度改正に併せ、紹介状を持たない初診患者から徴収する加算額を、医科初診の場合、現在の5,000円から7,700円に引き上げるものです。
 国の医療費削減政策の一環であり、患者の受診抑制を一層進めるとともに、市民への負担を図るもので容認できません。
 また、2016年(H28年)から徴収が義務化された地域医療支援病院の要件は、当初の一般病床500床以上から、現在は200床以上まで拡大されるなかで、加算額を徴収する病院が増加し、必要な医療を受ける上での差別の拡大となることから、反対です。
 議案第30号「市道の認定及び変更の件」は、市道西8丁目、9丁目中線が北海道新幹線札幌延伸による構造物により、通り抜けができなくなることで、市民生活に影響を及ぼすことから反対です。
 議案第31号「札幌市歯科口腔保健推進条例案」は、第11条で、市長、教育委員会に、フッ化物の応用等の科学的根拠に基づく、効果的な取組みの推進に関し、必要な措置を講ずるよう求めています。
 しかし、学校においての集団フッ素洗口を不安に思う市民から、「条例の制定を行わないこと」「フッ化物の文言を削除すること」などを求める陳情が出されました。
 フッ化物の有効性や安全性、また学校での集団実施には様々な評価や見解があることから、市民の懸念は当然であり、陳情第143号・144号・145号は賛成、条例案には賛成しかねるものです。

 議案第32号についてです。
 我が会派は、2030年冬季オリンピック・パラリンピック招致は、国内のみならず、世界が注目する、文字通り市政に関する重要な事項であり、市民の政治参加を保障し、市民意見を反映させる民主的なプロセスが必要だと考え、この議案を上程したものです。
 市長は、我が党のオリンピック・パラリンピック招致についての代表質問に対し、「まちの将来に関わる重要な取り組み」であるため、「2026年大会招致の際から、出前講座や市民ワークショップなど様々な機会を通じて市民の声を把握し、議会とも議論を重ねながら、招致活動を進めてきた」、と答弁されました。
 そもそも、出前講座やワークショップは、自主的に参加する形式であるため、大会招致に関心がある市民、もしくは団体が参加することになります。招致に関心がない人、招致に意義を感じない人は参加しませんので、おのずと、本市の実施した対話事業は、関心のある市民に絞られて行われたことを、自覚する必要があります。
 また、この事業は、招致の意義や計画概要を説明しながら、まちづくりに効果があることを、参加者に意識づける手法で進められました。「財政負担が増大するのではないか」など懸念を持つ意見は、「まちづくりへの意見」だと分類され、経費を縮減すれば招致への理解を得た、と解釈されて歪められ、反対であるとの受け止めはありませんでした。
 「市民の声を把握した」とする様々な機会とは、実にバランスを欠いたものでした。
 今年3月に、ようやく本市が行った、無作為抽出による1万人への「意向調査」も、理解促進のための手法で行われ、公正さに欠けたことは問題です。
 封筒には、調査用紙のほか、大会概要案、Q&Aが同封され、「大会概要案およびQ&Aをお読みいただいたうえで」の回答を求めるものでした。大会招致は、「市民生活に好影響を与える」、「大幅に経費が増えることはありません」、「さらなる経済効果も見込まれます」など、メリットを強調したQ&Aを読んでから回答に入るよう促されました。しかも、調査票は、8つの質問項目のうちの5つが「大会概要を理解したか、できなかったか」に〇をつけさせるもので、散々メリットを強調して、ようやく8問目で賛否を聞くという、極めて誘導的なものでありました。
 また、旭川、帯広など道内6都市の映画館来場者に対する街頭での意向調査は、協力者にはオリジナルバッヂを提供するなど物品を使ったやりかたにも、市民から疑問の声が上がっています。
 さらには、調査を実施した時期も、東京オリンピック・パラリンピック直後となると反対の意見が高まる懸念があることから、選手たちの活躍に心を躍らせた北京オリンピック・パラリンピックの直後であり、多数の賛成を得ることを狙ったタイミングでした。
 それにもかかわらず、調査結果が52.2%の賛成であったことは、「一定の賛同を得た」とは言えず、むしろ、様々な策をもって多数の賛同を得ようとしたが、辛うじて50%を超える数字にしかならなかった、と解釈することが妥当ではないでしょうか。
 百歩譲って、これらが公正なやり方だったとしてもなお、市民の賛否は拮抗していることは明白ではありませんか。
 市民の声を公正に、広く聞くことなく、招致に走っている本市の現状は、否定的な意見を持つ市民との軋轢を生じさせるばかりです。
 さらには、コロナ感染の拡大や、それに伴う東京大会開催の問題、ロシアの侵略戦争開始という新たな社会経済情勢の急激な変化が加わり、将来の税負担への不安のみならず、現状のくらしや、子育て・社会保障を充実する施策へ重点を置いた市政の転換を求める市民が増えています。
 大会招致は、自治基本条例に定める「市政の重要な事項」と、間接民主主義を補完するに足るものであることは、もはや、誰の目から見ても疑う余地がなく、市民の賛否が拮抗している以上、市民の意思確認を行うための住民投票を実施し、自治基本条例が謳う、市民が主体のまちづくりと共に、市民に開かれた議会とすべきです。
 先の本会議で「議案第32号」として上程した「2030北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会招致に関する住民投票条例案」を、6月2日の経済観光委員会で、質疑していただきました。
 まず、質疑で出されました、本市議会が3月30日に議決した、「2030年冬季オリンピック・パラリンピック招致に関する決議」についての見解です。
 決議は、議会の意思を対外的に表明することで、政治的効果を期待する、意思形成行為であります。本市議会では通常、議員総意の反映をめざすことから、全会一致で決議案を採択しておりますが、そもそも、この決議案は、大会招致を目指す意思を議会として表明する内容となっており、市民の賛否が拮抗しているため、我が党ならびに市民ネットワーク北海道が反対を表明するなか、賛成多数で採択されたものです。採択されたからといって、それに反対した会派に対し、「提出者は、議会決議の重みをしっかりと受け止めるべき」だとする言動は、行き過ぎであります。決議に法的根拠はなく、また、議員の条例提案という行動を拘束するものでもありません。この決議は、反対の意見があるなかで採択したものであることを、双方の共通認識にしようではありませんか。
 さて、委員会では、「議会の招致決議に基づき招致の理解に努めることが重要である」といったご意見や、「賛成、反対のみの2択での選択を市民に迫る条例案には反対」、「住民投票よりも市民理解を促進することが求められる」、等のご意見をいただきました。
 私どもは、賛否が拮抗するなか、一方的な形で大会概要案の市民理解を促進することよりも、本市や議会が、真摯に市民の意見をさぐり、その内容を理解しようとする姿勢が求められていると考えるものであり、その手法が住民投票であると考えます。
 住民投票が行われることになれば、当然、大会概要案について、今まで以上に広く、住民への情報提供と説明が求められますし、投票の周知を徹底しますから、当然、市民の関心も広がります。招致への理解が広がる土壌が作られるばかりか、市民の声を広く公正に聞こうとすることで市政への信頼にもつながり、大きな効果が得られるのではないでしょうか。大会招致の賛否について住民投票を行うことは、市長や私たち議員の願う、本市の「将来に向けた飛躍のための絶好の機会」であり、「長期的な視野に立った札幌市の発展について、市民を巻き込んだ議論」が行われ、より市民に開かれた市政となると考えるものです。
 2024年の夏季大会と2026年の冬季大会において、世界各国の都市では、住民投票を実施しました。札幌市も民主主義に基づき、住民意見を尊重する、世界に誇れる対応を議会が示そうではありませんか。
 本議案を提出した会派を代表し、議員みなさんのご賛同を呼びかけ、私の討論を終わります。