私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております議案7件に、反対の立場で討論を行います。
 一般会計決算の歳入は、1兆28億円、歳出は9923億円でした。なお、2018年度の繰越金12億円から10億円をオリンピック・パラリンピック基金に積み立てましたが、札幌招致については、市民意見の賛否は拮抗しており、基金を先行して積み立てることは問題でした。
 歳入から歳出を引いた形式収支は105億円で、翌年度への繰り越し財源37億円を差し引いた実質収支は68億円です。このうち35億円については、財政調整基金に積み立て、残余33億円を翌年度に繰越しました。繰越金は、社会保障や子育て等の負担軽減に資する施策に使うべきでした。

 秋元市長は「アクションプラン」で「北海道の未来を創造し、世界が憧れるまち」を目指すとして、「札幌・北海道の魅力資源を国内及び世界に発信」し、「投資や人材を呼び込む」と、外需依存型の政策を前面にかかげています。
 しかし、いま新型コロナウイルスのパンデミックで世界経済は大きく失速し、コロナ後の世界経済や社会を見据えれば、外需頼みのやり方は大幅な見直しを迫られており、内需を温め、地域経済を循環させる施策を中心にカジをきるべきです。

 議案第1号「令和元年度札幌市各会計歳入歳出決算認定の件」に反対する理由の第1は、都心アクセス道路建設を前提とした、創成川通りの機能強化に関する検討調査費415万円が含まれているからです。
 市長は2016年、国土交通大臣に『創成川通のアクセス機能強化を求める意見書』を、2018年には、北海道副知事、札幌商工会議所副会頭とともに、国土交通省政務官に『アクセス道路整備にむけ予算確保や調査を求める要望書』を提出しています。「市民の意見をいただく」としながら、建設に向けた地ならしを進め、今年2月、国は4案の中から『地下トンネル案』を決定しました。
 しかし、本市が示す、渋滞の解消などのアクセス道路の必要性は、どれもが根拠に乏しく、都市計画道路に向けた住民説明会では、「想定外の豪雨を考えるべき時に地下トンネルは危険だ」などの反対の声が出されています。しかも、高齢者の運転免許証の早期返納と免許を持たない若者の増加、カーシェアリングの急速な普及など、自動車が確実に減少する時代にあって、1千億円以上もの巨額の費用を投入する道路建設には反対です。
 また、市長が「都心アクセス道路の早期実現」を公約に掲げた時から、社会・経済情勢は変化しており、地球温暖化による豪雨災害が頻発し、新型コロナウイルス感染症による経済の低迷が続いています。本市が最優先すべきことは、老朽インフラ整備を急いですすめ、災害に強いまちづくり、冷え込んでいる経済の活性化、貧困対策などの事業であり、これらに予算を振りむけることが求められています。

 理由の第2は、民間再開発促進費に、北8西1地区再開発事業費2億3440万円が含まれているからです。
 当初計画されていた医療施設が撤退し、超高層マンションとホテル、オフィスが中心で、市民の期待を裏切る公共性に乏しいものとなりました。また地権者の理解と合意を積み上げて事業を進めていく点でも極めて問題があるものです。

 理由の第3は、ICT活用戦略推進事業費6773万円、キャッシュレス推進費1115万円が含まれているからです。ICTの官民による活用を促進するために、行政が持つ情報や、実証実験で得られたデータ等を収集し、連携する共通基盤の構築をしようとするものです。キャッシュレス端末導入補助は、飲食店の購買データを札幌市ICTプラットフォームに無償提供することを、本市独自の補助要件としました。市民の購買データをビックデータに蓄積することは、個人情報を保護する行政の役割からも問題でした。マイナンバー関連費7505万円についても、個人情報が流出する可能性と、国家による監視社会への懸念がぬぐえません。また、保守管理や維持・セキュリティ対策などに、今後も莫大な費用をかけ続けることになるため、反対です。

 理由の第4は、丘珠空港関連調整費3億1614万円があるからです。この中に含まれる利活用検討費は、滑走路を300mもしくは500m延伸させた場合の金額を示し、利活用の必要性を強調する誘導的なもので、住民と合意した基本的考えを軽視するものであり反対です。

 理由の第5は、「札幌市職員定数条例の一部を改正する条例」により、職員定数を削減したからです。民間委託を増やし、行政サービスの低下、非正規雇用の拡大など、官製ワーキングプアを広げるものであり反対です。

 理由の第6は、連携中枢都市圏を推進する関連費が含まれるからです。連携中枢都市圏構想とは、国が人口減少・少子高齢化を理由に、都市部周辺自治体の、公共施設・行政サービスの拠点を集約化するものです。この構想は周辺自治体の住民サービスを大幅に後退させ、地方衰退を更に加速させる懸念があることから認められません。

 理由の第7は、市民への負担増があるからです。
 国民健康保険の平均保険料を引き上げ、さらに国保の上限額を引き上げることで、中間層の保険料を引き下げることは、国保加入者に負担を強いるものです。後期高齢者医療制度の5割軽減としてきた扶養家族均等割を、加入後2年間限りとし、また低所得者への減額割合を引き下げ、保険料負担を増やしたことから反対です。

 議案第2号の「病院事業会計」は、一般病床数を31床削減し、健康保険法等の適用外診療、診断書、特別室・上等室の消費税増税分としての、値上げが含まれているから反対です。
 同様に、議案第3号の「中央卸売市場会計」では、施設使用料に、議案第4号の「軌道事業会計」と議案第5号の「高速電車事業会計」では、乗車料金等に、議案第6号の「水道事業会計」、議案第7号「下水道事業会計」では上下水道料金に、いずれも消費税増税に伴う値上げを含んでいることから反対です。

 次に、代表質問並びに委員会で取り上げた諸課題について、申し述べます。
 新型コロナ危機の現局面は、市内で感染者数が10月31日に54人、11月1日に59人と連続して過去最多を更新するなど、第三波も懸念される重大な事態に直面しています。医療関係への損失補填も含め、いっそう医療供給体制の強化に取組むことが急務です。
 代表質問で、介護老人保健施設茨戸アカシアハイツでの新型コロナウイルス感染症の集団感染が発生した際の感染症病床と専用病床それぞれの稼働率を伺ったところ「いずれもほぼ満床であった」と答弁されました。
 病床が逼迫し、医療崩壊の瀬戸際という深刻な事態であり、本市の医療供給体制の脆弱さを露呈しました。緊急時に対応できる余裕が無かったということです。しかし市長は、医療機関をはじめ、感染症病床等の削減を推し進める「地域医療構想」を国や道とも協議の上、引き続き進める考えを表明しているのは問題であると言わざるを得ません。
 医療・介護・保育など、人と接することが避けられない仕事に従事する市民への、インフルエンザワクチン接種費用の助成を求めました。本市は「現時点では職業に着目した助成はしない」旨の答弁でした。
 新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行による医療崩壊を防ぐためには、とりわけ介護施設に従事する市民へのワクチン接種費用の助成と定期的なPCR検査の実施を決断すべきであるということを改めて申し上げます。
 コロナ禍のもと、減収幅が大きく窮地に立つ介護現場が、ためらいなく報酬区分の特例措置を活用できるよう、国の臨時交付金を活用し、増額する利用者負担分への、本市独自の補助金制度の創設を求めました。本市は、新たな利用者負担増を認識しつつ、全国的に共通した取り扱いであるとして、介護事業所等への独自支援に背を向けました。倒産、廃業させないためには、本市独自の補助を検討すべきです。

 北海道新幹線の残土受入れ候補地選定と、住民合意について代表質問等で取り上げました。
 手稲区山口地区の受け入れ候補地選定について、地元住民から調査の中止や説明会の開催を求める陳情が出されましたが、本市は、個別対応はするが調査は進める、という強引な姿勢を明らかにしました。
 産業廃棄物の埋め立て処分場や地下鉄建設時の残土などを受け入れてきた厚別区山本地区では、町内会の全員が「候補地に反対」の意思を明確に示し、「もうこれ以上勘弁してほしい」と話しています。
 市長は「札幌まで延伸されてこそ、その効果が発揮される」と事業を推進する考えを答弁しましたが、住民合意なしに進めることは問題です。
 我が党はこれまでも、都心アクセス道路建設推進のために誘導的なアンケートを行い、賛否も問わないことや、学校統廃合を決定したあとに住民説明会を行ったことなど、市民との合意形成の不十分さを指摘してきました。
 市政の主役は市民であり、住民合意に向けた十分な話し合いぬきに、強引に進めるやり方は、市政運営に大きな禍根を残すことから、改めるよう強く申し述べます。

 危機管理対策室です。
 感染症を踏まえた避難所の対策として、衛生用品やパーテーションなどの備蓄増を求めました。また、災害時避難所以外で過ごす市民への支援など情報の周知と、マンション等で避難する場合を考え、管理組合等と連携・支援も検討すべきです。

 財政局でのコロナ禍の納税相談についてです。
 新型コロナウイルスの影響により、納税が困難な場合「徴収猶予の特例制度」が活用されています。この特例制度を受けた市民や事業者は予期せぬ感染症の拡大により、納税が困難となった方であり、猶予分の納付については、相談者の生活や実態に寄り添った対応を求めます。

 市民文化局では、多様な性へのあり方に関する取組みについて、質疑しました。
 本市職員が、LGBT・性的マイノリティを理解し支援するALLYとして職務にあたるよう、効果的な研修と、市民向けの取組みについて求めました。「男女共同参画推進条例」に、多様な性のあり方を位置付け、社会全体でLGBTへの適切な理解が広がるよう、法整備を国に働きかけるべきです。

 保健福祉局です。
 生活保護の申請ができるにも関わらず、「自分は該当しない」と誤解している市民もいることから、周知をいっそうていねいに進めるよう求めます。
 また、申請者にとって個人のプライバシーを伝えることの負担が大きいことなどから、保護申請時に民生委員の意見書を求める制度の見直しを求めます。

 子ども未来局です。
 児童虐待についてです。
 児童相談所と関係機関の連携で、虐待となる面前DVを受けた子どもへ支援を継続することを求めました。また、児童相談所等の人事配置と異動について、専門性と経験値の高い職員を増やすためにも、人事異動サイクルを広げることなどを、検討すべきです。
 子どもの貧困対策についてです
 ひとり親世帯は、生活費を得るため複数の仕事を掛け持ちするケースが少なくありません。NPOが4月に行った調査では、ひとり親の50%以上が「コロナの影響で仕事がなくなる。もしくは仕事が減る」と答えており、6月の調査では「70%は収入が減少、19%は収入がなくなった」と答えています。極めて深刻な状況です。
 本市の貧困対策計画に不足しているのは、困っている人に直接届く現物給付であり、児童手当や児童扶養手当などの現金給付制度を、本市として増額することを求めました。あわせて「義務教育児童生徒遠距離通学助成制度」の対象に、フリースクールに通う児童生徒を加えることを求めました。
 現状では貧困の解決にはほど遠く、その解決には、貧困の実態を正しく把握することが欠かせません。来年度行う子どもの貧困実態調査では、本市における国の相対的貧困率、子どもの貧困率に相当する数値等を算出できる調査とするよう求めます。

 経済観光局です。
 定山渓温泉の観光振興策についてです。
 札幌市の基幹産業である観光は、感染症の影響により厳しい状況に置かれており、今後はwithコロナの視点を踏まえインバウンドに依存し過ぎない、足腰の強い観光振興策が必要です。定山渓は温泉のみならず、自然やアクティビティーなど、多くの魅力的なコンテンツを有する札幌市の代表的な観光資源であり、宿泊業のみならず、多様な地元関連業種により観光産業は成り立ち、雇用も生み出しています。
 会派として、2017年から繰り返し、具体的な改善策について、トイレや公共駐車場などの基礎的なインフラ整備を求めてきました。今後は温泉街全体への周遊をはかるため、整備を進めている駐車場に観光案内版を設置するとともに、湯の町への新たな駐車場整備についても検討を進めるべきです。

 環境局です。
 ヒグマとの共生を目指した市街地への侵入抑制策として、電気柵は有効です。
 羅臼町での実証実験等を参考にした、侵入経路を遮断できる場所への電気柵設置の検討と、ヒグマ活動期の職員体制強化を求めます。農政部においては、対象外とされている市街化区域の農業者にも電気柵の補助を拡大し、市街地周辺ゾーンでのヒグマ侵入抑制策を取るよう求めます。

 都市局です。
 本市では、CO2排出量が家庭部門で36%と、高い割合を占めていることから、できるだけ暖房を利用しない住宅整備を推進しています。グリーンリカバリーの考えで、経済効果も高い住宅エコリフォーム制度の思い切った事業費増額や、里塚団地での外断熱改修実証実験を活かした、住宅修繕の際の支援策を推進すべきです。

 最後に教育委員会です。
 学校の環境改善と少人数学級について代表質問で取り上げました。
 「学校の新しい生活様式」を踏まえた衛生環境として、窓を開けて換気を行う際の網戸や、手で直接触れずに開け閉めできるレバー式蛇口などの器具を、全小中学校に設置することを求めました。コロナ禍において、教室での児童生徒間の十分な距離を確保することが困難な状況は、学校現場において大きな課題であり、改善しなければなりません。市長公約である35人以下学級の拡大は、小学3、4年生に限定することなく、全学年で実施することを求めます。
 就学援助制度についてです。
 新型コロナウイルス感染症の影響で、失業していなくても収入減少で生活が困窮している就学児童がいる世帯は、制度の対象にすることを求めます。また、支給費目に眼鏡を追加すべきです。
 以上で私の討論を終わります。