私は、日本共産党を代表し、議案第1号、第9号、第11号、第12号、第16号の5件に反対、残余の議案に賛成の立場で討論を行います。
 今回の一般会計補正予算は33億5,900万円、選挙後初の肉付け予算で、予算額は当初予算比1.1%増の1兆227億100万円で過去最高の規模となっています。
 市長は、「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」を掲げ、「民間の力を活かした都心のリニューアル」をすすめるとして、北海道新幹線札幌延伸に向けた北5西1・北5西2地区の市街地再開発準備組織の立ち上げなどに1億5,000万円を計上し、また、札幌駅周辺や大通東1街区など、都心部中心の再開発事業を推進しようとしています。
 一方、先の市長選挙で公約した「第2児童相談所の開設」は、虐待による女児衰弱死で厳しく責任を問われながら、わが党の代表質問に対して「検討を加速する」という程度で、差し迫った深刻な課題、という認識が薄いと言わざるを得ません。
 また、「奨学金制度など就学支援の更なる拡充を図ります」という公約についても、予算規模など拡充の具体策を何ら示されませんでした。
 「女性がさらに輝き活躍する街」「すべての子どもたちが健やかに育つ街」の実現を掲げていますが、保育人材の確保や子育て世帯の経済的負担の軽減も極めて不十分なものです。
 労働法制の規制緩和で低賃金、不安定な非正規雇用が増大しています。札幌でも労働者の約4割、女性の実に54%が非正規です。そうしたもと、増え続ける医療・介護の保険料負担などが市民の暮らしを圧迫しています。医療・介護・子育て支援など、市民生活を応援する施策の思い切った拡充こそ求められています。

 議案第1号に反対する理由の第1は、札幌市ICT活用戦略推進費として、官民データ活用促進を図るために520万円が計上されているからです。
 アクションプラン2015のもと積極的にICT活用をすすめ、2017年度はおよそ40億円を支出しICT環境を広げました。一方で、本市が本年1月から2月に実施した最新の市民アンケートでは、「個人情報やプライバシーの権利を保護すること」を求める意見が約8割と多くなっています。
 個人情報を厳格に保護する具体的な対策と技術根拠が曖昧なままICT活用戦略を進めることは、個人の権利や利益を守るためにも看過できない問題です。
 同様に都心ICTまちづくり推進事業は、防災情報の機能強化といいながら、個人情報漏洩の懸念があるICT活用環境の拡大であることから反対です。
 理由の第2は、「キャッシュレス推進費」として、1億400万円が計上されているからです。
 「外国人観光客受け入れ環境向上」が目的だとしています。しかし、国が今年10月から予定している消費税率10%への増税が経済に与える影響を緩和させるための対応策として行われる決済端末導入への補助です。その内容は、国からは3分の2が補助され、残る3分の1と、レシートプリンタ費用を、さっぽろ産業振興財団を通して全額補助を行なおうとするものです。
 対象となる市内飲食店等は個人経営が多く、導入しても、売り上げ金が数日ないし、月末に入金されることや、決済事業者に支払う手数料の負担等が発生し、お店の経営が困難になることが懸念されます。
 また、本市は独自に補助要件として、「飲食店等は、購買データを札幌市ICT活用プラットフォームに無償提供すること」としています。これは、市民の購買データをビッグデータに蓄積するものであり、個人情報を保護する行政の役割から問題です。したがって、「購買データを札幌市ICT活用プラットフォームに無償提供すること」とする補助要件は外すべきであり、この事業には反対です。
 理由の第3は、「富裕層向けホテル誘致推進費」として500万円の予算を組まれているからです。
 本市の計画では、次年度もさらに調査を実施し、その翌年度には誘致を行うとのことですが、すでに導入している奈良や京都では、ホテル業者へさまざまな税の軽減を行い、土地利用の規制緩和などを実施しています。本市は、それを行うかどうかは「調査の中で検討する」と答えましたが、他都市がこのような優遇策を行っている以上、競争論理に巻き込まれることは必至です。
 北海道・札幌の豊かな自然と冷涼な気候のなかで市民の日常のくらしや文化を肌で感じてもらう工夫を凝らすことで、富裕層を含めた外国人観光客が滞在型で札幌を楽しんでいただくことは十分可能であり、この事業に反対です。
 理由の第4は、業務改革推進費として、本市の各種業務の委託化などを想定しているからです。
 委員会の質疑では「業務の流れ等を可視化することで、必要な対策を考えるために、委託ありきではないが将来的には選択肢となりうる」とのことでした。高齢化が進み、医療・福祉の制度が複雑多様化するもとで、今後市民に対する窓口業務は、丁寧な対応や専門性と経験の蓄積こそ求められており、委託化すべきではありません。

 議案第9号「札幌市普通河川管理条例及び札幌市流水占用料等徴収条例の一部を改正する条例案」ならびに、議案第12号「札幌市消防手数料条例の一部を改正する条例案」に反対する理由は、いずれも今年10月からの消費税10%への引き上げに対応するためのものだからです。
 議案第11号「札幌市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例案」は、もみじ台団地の地区整備計画について、「閑静な住宅街を損ないたくない」、「路上駐車や騒音が増加する」との意見があり、地域住民との十分な合意ができていないことから賛成できません。
 議案第16号「軌道運送高度化実施計画の変更の認定についての意見に関する件」に反対する理由は、運送の主体と、施設・車両整備の主体を分離する路面電車の上下分離は本市が運送事業に直接かかわらないこととなり、公共交通としての本市の責任が不明確になることから反対してきましたが、それに伴うものだからです。

 次に議案審査特別委員会で取り上げました諸課題について順次述べてまいります。

 総務局です。
 「多文化共生推進」事業は、国が入管法改定を不十分なまま進め、施策が追い付かない中、在留外国人の相談窓口を整備するものです。
 今後増加が見込まれる在留者の実態把握と当事者の要望を生かすための調査、様々な相談に応じる職員のスキルアップの必要性について、「研修や窓口のノウハウを蓄積すること、連携し見守り体制を作っていきたい」とのことでした。相談者が孤立化しない対応をしていくことが重要です。

 スポーツ局です。
 「市民とつくる冬季オリンピック・パラリンピック開催概要計画策定費」についてです。
 2026年開催がイタリアに決定した決め手は83%という国民の高い支持率だったとIOC会長は語っています。来年開催の東京オリンピック・パラリンピックで開催経費が膨らんでいることから、本市では、賛否が拮抗しています。市民生活が大変な中、莫大な税金をつかっていいのか、将来世代の負担になるのではないかという市民の不安はぬぐえません。広く市民意見を取り入れて双方向での議論を深めながら、検討を進めるべきと申し上げます。

 保健福祉局です。
 「乳がん検診費」についてです。
 本市は今年7月から乳がん検診受診者が希望した場合、超音波検査を追加できる補正予算案3,300万円を計上しました。
 国立がん研究センター情報サービスによると、乳がんでの死亡率は、全国が10.7%であるのに対し、本市は12.7%と高くなっています。
 乳がんは「早期発見して治療すれば95%以上は治癒する」ことから、39歳以下の若い世代に検診のための負担軽減を行い、一人でも多く検診の受診者を増やすために、医療機関との連携を強めるよう求めます。
 「子ども医療費助成の小学6年生までの拡大」についてです。
 2021年度小学6年生まで通院助成拡大する議案が出され、市民からは大変喜ばれています。
 しかし本市の助成制度は、初診時や入院費用の一部負担と、所得制限があります。患者負担が増える制度改革が行われると、患者の受診日数が減少するという指数があり、一部負担は受診抑制に繋がることがわかっています。本市は「今後の検討課題」と答弁しましたが、一部負担金と所得制限をなくすよう求めます。併せて、通院助成の対象は、中学校3年生まで拡大すべきです。

 子ども未来局です。   
 子どもの貧困対策推進として、昨年8月から開始した子どもコーディネーター事業は、「子どもコーディネーター」が若者総合支援機関に拠点を置き、児童会館などの子どもの居場所を巡回し、様々な困難を抱える子どもと世帯を把握し支援を行うものです。有資格や、経験豊富なコーディネーターが、複雑な事例などには、チームで支援策を検討しています。答弁で「困難を抱えている家庭の状況を的確に把握し、適切な支援につなげるためにコーディネーターが積極的に地域に出向き、地域と連携しながら対応することが重要」と言われたように、一人ひとりの背景を含めて支えられるような積極的な取り組みをすべきです。
 次に、保育士確保対策についてです。
 潜在的保育士短時間就労支援補助事業は、時間単価の上乗せでしかなく、保育支援者配置補助事業は、保育の一環と、保育支援者の周辺業務との区分けが難しく負担軽減として十分ではありません。また、保育人材確保に向けた一時金給付事業は、求められている賃金の引き上げにはなりません。
 このように、保育士の低賃金、過重労働の問題が抜本的に解消されない中で、広告代理店任せで、560万円の委託費をかけて、保育人材イメージアップ事業を実施しても期待できません。
 イメージだけ上げても、保育士の離職率の改善にはつながらず、本市独自で直接的な保育士の処遇改善策によって、保育士確保・就労継続支援すべきです。

 経済観光局です。
 「定山渓集客交流拠点施設整備費」についてです。
 本市は集客交流拠点施設整備費として、定山渓まちづくりセンターの隣地の駐車場と施設を整備する予算案を示しました。定山渓温泉は本市の重要な観光資源として、今後ますます活性化が重要であり、施設周辺の整備は急がれる課題です。
 定山渓観光協会など、地域との十分な話し合いで進められるよう求めます。
 「アドベンチャーツーリズム推進」についてです。
 2021年のワールドサミットを北海道・札幌に誘致することを目的に500万円の予算を組むとのことです。
 これをきっかけに、滞在型で楽しんでいただくためアウトドアの道具をレンタルする事業者の実態の調査や、現地へ移動するための車やキャンピングカーなどを、どこで手配し、どこを拠点にしていただくかなどの整備を検討されるよう求めます。

 建設局です。
 「公園の官民連携推進費」についてです。
 都市公園法の改正により「公募設置管理制度」パークPFIが創設され、民間事業者の参入を促す制度の導入によって、中島公園駅周辺地区の街づくりをはじめ、主要8公園の管理運営方針を作成するものです。
 本市は小規模カフェなどを想定していますが、当事者である地域住民の声をしっかりうけとめ、市民の緑の財産である公園が、利益を追求する企業などの参入によって、もうけの対象とされ、その結果豊かな空間が損なわれることのないよう求めます。

 都市局です。
 「大規模盛り土造成変動予測調査費」についてです。
 2017年度に第一次スクリーニングで作成した「大規模盛り土造成マップ」を高度化する事業ですが、清田区など昨年9月の地震の被害が大きかった地域を優先的に調査するよう求めたところ、「被害の大きかった地域も視野に入れ暫定的な調査の優先順位をきめる」との答弁でした。
 調査の結果をわかりやすく市民に伝えるよう求めます。

 最後に、教育委員会です。
 公立夜間中学校設置に向けた調査・検討では、計画策定にあたって学識経験者のほかに、自主夜間中学などの設置や運営に関わっている方々からも外部委員として意見聴取をする予定とのことでした。           
 札幌市の自主夜間中学では、全国と比べ外国人籍より高齢者が多く利用しており、今年度中に基本計画をつくるべきです。
 特別支援教育についてです。
 年々増加する医療的ケア児の支援について、本市はモデル事業を昨年度の2校から今年度9校に広げ看護師を派遣するとしました。児童が安心し安全に学校生活を送るためにも週1回5時間から、週5日6時間などに増やすことを求め、「日数や時間についてさらに必要と考えている、事業を経て検討したい」という答弁でした。
 また、毎年入札の委託契約としている看護師派遣は、看護師が変わらず児童のケアにあたることが望ましいことから、継続した雇用が必要であり、直接雇用など長期雇用の検討が必要と求め「雇用形態も含め、検討したい」と答弁されました。さらに、児童・保護者、学校と看護師の相互理解のためにも意見を聞き事業に生かすべきです。