私は日本共産党を代表して、「議案第1号令和4年度札幌市一般会計予算」、「議案第5号 令和4年度札幌市国民健康保険会計予算」、「議案第7号令和4年度介護保険会計予算」を撤回の上、再提出を求める動議の提案理由説明をおこないます。

 第1は、市民合意のない大型開発事業、不要不急の事業にかかわる歳出の削減です。
 1点目の創成川通機能強化検討調査費と2点目の創成川通直轄事業負担金についてです。
 いわゆる都心アクセス道路計画は、都市計画審議会に出された反対の「意見書」もまともに議論されず、委員が事業化の必要性について疑問を投げかけたものの解明されないまま、国の事業採択に持ち込まれました。
 混雑度もなく、物流への貢献も見通せず必要性は希薄です。さらに地下構造案が採用されたため、総事業費は1000億円から1200億円に増加、地下に埋設された下水道管の移設が必要となり、その経費が最大200億円にのぼると想定されています。
 都心アクセス道路計画は、くらしや福祉にまわるべき予算を圧迫し、新たな財政危機をもたらすことにもなりかねず、アクセス道路関係費の2億4300万円は削除すべきです。
 3点目は、北海道新幹線推進関係費‣72億8100万円です。
 延伸トンネル工事で出た有害残土の処分場持ち込みが強行され、処分場候補地の周辺住民の不安が増大しています。市内中心部を掘り進む札幌工区においては、新幹線ルート上のマンション住民がルート変更を求めています。また、掘削残土の搬出ルートの変更を求め周辺住民が声をあげています。 
 それぞれから議会陳情が出され、不安や安全を無視した強引な進め方への厳しい批判や疑問がのべられました。
 5年前倒しとした2030年開業に間に合わせる強引なやり方は許されず、いったん立ち止まり再検討すべきです。
 4点目は、札幌駅交流拠点まちづくり推進費・13億8900万円です。
 「北5西1・西2地区」、「北4西3地区」の新幹線開業を見込んだ札幌駅周辺再開発は、富裕層向けホテルやオフィス階などを備えた超高層ビルを核として、東改札口整備や創成川横断デッキ構想を進めるものですが、本来、基幹施設といえる駅舎や改札口は、国や機構が整備すべきものであり、市が負担することは市民合意が得られません。駅周辺開発の前提とされる人のにぎわい、交流人口の見込みは、10年前の需要予測に基づいたものであり、コロナ感染の収束時期や経済情勢は未だに見通せないなかで、巨大開発を進め補助金を投入し続けることは見直すべきです。
 5点目は、民間再開発促進費・58億5300万円です、
 都心のリニューアルにむけて、投資を呼び込むという位置づけは変わらず、「北8西1」、「南2西3」の再開発は、総事業費の増額を繰り返してきました。
 投資の中心とされるのは、超高層マンションであり、施行を大手デベロッパー、工事を本州大手ゼネコンが手掛けるため、利益の多くが大企業に流れています。しかも、マンションの購入者は、4割がセカンドハウス目的といわれます。
 事業規模と比較して、市内中心部の定着人口やにぎわいには結びつかず、経済的な波及効果も一時的にとどまるため、まちづくりの在り方の観点や、補助金を投入する効果の角度から再検討すべきです。
 6点目は、丘珠空港関連調整費は、丘珠空港の将来像検討、利用促進に係る取組のために約1億1883万円を計上するものです。
 「丘珠空港の将来像」によると、空港と都心を結び、インバウンドによる利用客を呼び込む開発計画で、利活用を図ろうとしています。大量の人を高速で移動させる交通手段のあり方が問われるウイズコロナの時代において、描く将来像がふさわしいものかどうか、再検討が必要です。また、1996 年に生活環境の悪化を懸念する住民の反対で「不可能」とされた滑走路の延長を盛り込んだままでは、住民の不信感は募る一方です。計画を見直すべきです。
 7点目は、冬季オリンピック・パラリンピック招致費・5億3889万円です。
 意向調査が実施され、市民1万人を対象とした郵送調査では、「賛成」「どちらかといえば賛成」は52%、「反対」「どちらかといえば反対」は39%、「わからない」は9%となりました。「平和と友好の祭典」といわれながら、4割もの市民が大会計画に疑問を抱き、不信が示されました。
 まちのリニューアルをすすめる起爆剤と位置づけ、市民不在のまま招致を進めてきたことへの不信といっても過言ではありません。巨額の経費が本市財政を圧迫し、市民にしわ寄せされるのではないか、議会の質疑を通じても疑問は深まるばかりでした。
 このような中で2030年招致に突き進むのは、市政運営に重大な禍根を残すことになりかねず、招致はとりやめるべきです
 8点目は、MICE(マイス)推進費・1億9300万円と、MICE(マイス)施設整備費・2500万円です。
 札幌市は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、「MICE・ホテル施設」の再検討期間を2024年3月まで延期しました。一方、21年11月に「中島公園駅周辺地区まちづくり基本構想」を策定し、「MICE・ホテル施設の整備効果を高め」ることを目的に、中島公園北口とMICE・ホテル施設計画地を、新たな「重点再整備エリア」として設定しました。
 まだ、再検討の結果が出ていないのに、「MICE・ホテル施設」の整備効果を語ることや、周辺の整備エリアを広げていくことは、あまりに前のめりです。これらの予算は見送り、再検討結果を踏まえてから進めるべきです。

 第2に、マイナンバーにかかわる歳出の削除です
 住民情報総括費28億3089万円などのなかに、マイナンバー制度に対応したシステム改修費やシステム運用経費が計上されています。国が進めるマイナンバー普及に対応したもので、市は、こうした整備と一体で、札幌市個人情報保護条例についても廃止する方向です。
 国が個人情報の民間事業者への提供を広げながら、自治体がもつ個人情報を保護する規定がなくなれば、漏洩の危険が増し、市民のプライバシー権が脅かされることになります。

 第3は、当事者や地域の合意のない学校再編関連経費の歳出の削減です。
 1点目は、学校規模適正化計画推進費・1100万円です。
 学校の統廃合、学区再編等をともなう学校規模適正化計画は、子どもと地域への影響が大きく、当事者や地域住民の納得や合意がないまま、画一的・機械的に進めてはなりません。
 情報提供や説明を、検討段階を理由に町内会の一部役員にとどめ、保護者や子どもたち、地域住民と学校関係者などに、計画を十分に広げずに進めるやり方は見直すべきです。
 2点目は、学校用地取得費・7億3700万円です。
 仮称)真駒内地区義務教育学校については、学校規模適正化方針と同様に、学校の統廃合を伴います。しかし、保護者や子ども、教育関係者らが直接、意見を述べる説明会が実施されておらず、設置方針の見直しを求める南区民が、教育委員会に要請書を提出しています。
 市は、「小学校と中学校の校区が概ね一致」することを条件に、教育期間が9年間となる義務教育学校の設置を進めていますが、真駒内では大規模校が想定され、教育環境や教育効果について、当事者や関係者も交えた慎重な検討が必要です。様々な課題を積み残しにしたまま進めることは認められません。今年度の用地取得は見送り再検討すべきです。

 第4は、新型コロナ感染の「第7波」など再拡大に備え、保健所体制、PCR等検査、医療や介護の支援を強化する予算の確保です。
 1点目は、正職員の保健師の抜本的な増員です。
 昨年、市が国に報告した、本庁や保健所、保健センターに配置されている保健師数は、人口10万人当り13.47人で、20政令市中で19番目という低さでした。
 政令市平均の16.4人まで引き上げるために58人の定員増が必要です。感染拡大から丸2年、保健所や各区保健センターで公衆衛生の機能を強化するためにも、保健師の定員を増やし、第7波や今後の未知の感染症に備えるべきです。政令市平均まで増員する予算として、約3億7000万円の増額を求めるものです。
 2点目は、PCR等検査体制の予算確保です。
 オミクロン株の感染拡大は、発熱外来や無料PCR機関に受診や検査依頼が殺到し、検査をすぐに受けられない状況が続きました。検査の遅れは、陽性判定や濃厚接触者の特定に遅れを生じさせ、感染拡大を招いたと指摘されています。
 今後、感染の再拡大に備えるためにも、陽性者の早期発見、保護、治療が必要であり、検査体制の拡充にむけて、「8か月予算」とされている診断検査・18億9100万円、変異株検査・2億1000万円を、12か月予算として組み替えるための新たな予算、約25億円を確保し、疫学調査と行政検査などの強化を図ります。
 3点目は、感染リスクが高い医療機関や介護施設について、感染者の受け入れにかかわらず、かかり増し経費を補助する予算の確保です。
 まず医療の支援策です。病院やその従事者を支援する、「新型コロナウイルス札幌ささえあい基金」は当初2億5000万円でしたが、4億5000万円が追加補正されました。地方創生臨時交付金の活用や独自財源の投入で、約10億円規模とし支援の強化を図ります。
 次に介護施設への支援です。
 定員150人余りのある老健施設では、コロナ前と比較して、マスクや防護服等のかかり増経費が年間700万円増となっています。
 減収補てんがないなかで、こうしたかかり増し経費の増大は、市内介護施設の経営を圧迫し続けています。
 かかり増し経費については、入所者や従事者が感染者、濃厚接触者になった場合に限定せず、補助要件や補助対象について拡大を図ることを求めます。そのために約40億円の予算を確保します。

 第5は、市民や子育てを応援、除排雪をまちづくりに位置付ける予算の確保です。
 1点目は、暖房にかかわる燃料費助成でくらしを応援する予算の確保です。
 国の特別交付税も活用した「福祉灯油」等、暖房用燃油への支援策を、中核市を含めた道内市町村が実施する中で、本市のみが未実施となっています。
 政府は、原油価格の高止まりが続くとの見方から、特別交付税措置の追加を決めました。市議会には、支援策の実施を求めて100件近い陳情が寄せられ、切実な要求となっています。
 政府の新型コロナ経済対策の給付金と同様に、住民税非課税世帯を対象に1万円を給付し、暖房用燃油の購入に役立たせてもらうため約17億5000万円の予算を確保します。
 2点目は、子ども医療費無料化の対象年齢を中学3年生まで引き上げる予算の確保です。
 市長は、第4回定例会の我が会派の代表質問にたいし、「将来にわたり多額の財源を要するため、事業の持続可能性や子ども・子育て施策全体の中での位置づけなどを踏まえながら検討してまいりたい」と答弁されました。通院医療費の無料化は今年度から小学6年生まで拡大されましたが、全国的にも札幌市の遅れは顕著です。
 予算特別委員会の質疑では、本市は政令市最低の合計特殊出生率ですが、さらに下回ったとの指摘がありました。
 子どもを生み育てやすい環境整備を進めるため、一日も早く、子どもの通院医療費無料化の対象年齢を中学3年生まで引き上げるべきです。
 そのための予算、約9億円を確保します。
 3点目は、生活道路の除排雪を徹底し、地域・町内会負担を廃止するための予算の確保です。
 今冬の大雪は、本市が現在検討し実証実験を行っている、20センチの雪を残す新たな除雪方法は成り立たず、徹底した除排雪が必要なことを証明しました。
 パートナーシップ排雪制度の住民負担は廃止の方向とし、生活道路の排雪作業の重視、除雪の出動基準を引き上げて、除雪業者の日常的な業務を確保します。また、夏場の公共工事を生活密着型で発注することを強化し、夏冬一体で除雪業者が安定的な仕事を確保できるようにします。
 除雪業者と従事者を、まちづくりを支える産業、人材として位置付け、抜本的な除排雪の強化に向け、体制強化のための調査や検討をすすめる予算1億円が必要です。
 当面は、パートナーシップ排雪制度の地域・町内会負担の廃止の予算、9億円とあわせて約10億円を確保します。
 4点目は、積極的に35人以下学級を全学年へ拡大するための予算の確保についてです。
 国は2025年度、道は2024年度までに、公立小学校の全学年で35人以下学級をめざす方針ですが、札幌市は2021年度、小学3年生の試行実施にとどまりました。
 2022年度は小学3年生を全面実施するものの、4年生以降の拡大は2025年度の国の実施スケジューに合わせると説明されています。
 北海道は、少人数の良さを生かし、質の高い教育活動が行われるよう支援するとの理由で、国より1年前倒しとしました。本市は、新幹線開業の2030年に合わせて、様々な大型開発に突き進んでいる一方で、子育て世帯から繰り返し要望されてきた35人学級を、なぜ先延ばしするのでしょうか。2022年度から早期に義務教育部分の35人学級を実施するように約24億円の予算確保を求めます。

 第6は、国民健康保険料の子どもの均等割軽減を18歳に引き上げる予算の確保です
 22年度から国が実施する、未就学児に係る国民健康保険料均等割額の5割軽減にあわせて、その対象を市独自に18歳まで引き上げて、子育て世帯の負担を軽減するため、国民健康保険会計に一般財源から1億7400万円を繰り入れるための予算を確保します。

 第7は、介護給付準備基金を取り崩し介護保険加入者や利用者の負担軽減に活用する予算の確保です。
 基金が積みあがるのは、保険料が引き上がる一方で、介護サービスの利用が低下しているためです。20年度は月平均9000人いた補足給付対象者が、22年度見込みで約7900人に減少するなど、国の制度改悪で切り捨てられた対象者への支援も求められます。
 市は21年度に、基金残高が約90億円に縮小すると見込んでいますが、22年度には約30億円積みあがる見通しです。基金の原資は市民が納めた保険料であることから、介護保険の事業主体として、積みあがった分の基金を取り崩し、基金を活用し介護保険料や利用料の負担軽減を図るべきです。

 新型コロナウイルス感染症から命やくらしを守ることを最優先に、一般会計予算を組み替え、一般会計からの国民健康保険会計への繰り入れ、介護給付費準備基金から介護保険会計への繰り入れをおこなうために、3会計の予算を撤回し、組み替えの上、再提出を求めるものです。
 各議員のみなさまの賛同を、呼びかけるものです。
 以上で、動議の提案理由説明を終わります。