私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております議案13件中、議案第1号、並びに第6号に反対、残余の議案に賛成の立場から討論をおこないます。

 今回の一般会計補正予算は341億6,800万円が計上され、先の第1回臨時議会で議決された補正予算178億1,700万円と当初予算を合わせた今年度の一般会計予算は、前年度比7.1%増の1兆2,441億8,500万円で、過去最高の規模となっています。
 本補正予算の編成にあたって市長は、「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」の推進に資する事業、特に、コロナ禍で落ち込んだ経済の活性化など、早急に実施する必要がある事業を中心に予算計上したとしています。
 しかし、家計を圧迫し続ける物価高騰への対策は、給付金額と対象を国基準にとどめ、我が党が5月におこなった緊急要望や、第1回臨時議会の質疑で求めた、市独自の上乗せ給付や、「家計急変世帯」への給付拡大は実施されませんでした。
 市長が公約として掲げた子育て支援策についても、具体的な検討方向すら示されず、優先されたのは、情報漏洩とプライバシー権の侵害を拡大させかねないマイナンバーカード普及促進のためのデジタル推進費、市民合意のないまま理解と対話を押し付けるオリンピック・パラリンピック招致費、根拠が薄い需要予測をもとにしたJR札幌駅周辺再開発事業であり、予算の使い方は逆立ちしたものでした。

 議案第1号「令和5年度札幌市一般会計補正予算(第2号)」に反対する理由の第1は、冬季オリンピック・パラリンピック招致費として4100万円が計上されているからです。
 3月の当初予算成立後、報道機関による世論調査の結果をみても、招致反対派が6割以上を占めています。これは、市民の声を聞くことなく、招致を進めることへの不信感が表れたものだと、我が党は一貫して指摘してきました。
 先日の冬季オリ・パラ調査特別委員会では、大会運営の見直し案が審議され、組織委員会は情報公開に取り組むものの、IOCとの守秘義務により情報開示が制限されること、汚職や談合の温床となった専任代理店方式についても除外しない、と本市は説明され、市民の不信感は払しょくされないままとなりました。
 さらに、IOCとの開催地契約は、協議体制を確保するとされただけで、不平等が解消されるのかその見通しは示されず、見直し案の実効性は極めて疑問です。
 東京2020大会の汚職や談合事件は裁判中で、全容解明はこれからであり、東京都や国の調査内容も明らかにされていないなかでの本市の大会運営の見直し検討は、東京大会の教訓を踏まえたとはいえず、それをもってシンポジウムや市民説明会をすすめようとするやり方は、市民の不安や不信を高めるもので、すでに破綻しています。
 招致はいったん中止、白紙とし、市民の声を広く公正に聞くために、自治基本条例に基づいて、招致の賛否を問う住民投票を行うことを、改めて求めるものです。

 理由の第2は、札幌駅交流拠点まちづくり推進費として、北5西1の市有地を222億2,840万円で売払い、まちづくり推進基金に積み立てるものが含まれているからです。
 北5西1・西2の再開発事業に伴い、本市は、事業で建設された建物の床面積、いわゆる「権利床」を取得しない方針です。再開発後は、公的関与が縮小され、市民の声がまちづくりに届きにくくなり見直すべきです。
 また、今回の売払い価格が実際の取引価格である実勢価格と乖離していくことも予想され、適正価格となり得るのか疑問が残ります。

 理由の第3は、マイナポイント申込等支援期間を延長するICT活用戦略推進費追加1億4,600万円が含まれているからです。
 マイナンバー制度について、わが党は、マイナンバーカードの利用を国民生活の様々な分野に拡大することは、個人情報の集中や国家による一元管理の国民監視につながること、また、個人情報漏えいの危険、それに伴うセキュリティー強化のため、際限なく費用がかかり続けることになると指摘してきました。
 国は、カード取得は任意であるにもかかわらず、昨年10月に、来年秋には保険証を廃止する方針を突然表明、取得しなければ受診に不便が生じると、事実上、取得の強要を図りました。
 また、上限2万円分のポイント還元事業や、専用窓口の増設など、あの手この手を使って、躍起となってカード取得を進めてきました。
 その結果、証明書のコンビニでの誤交付というトラブルが次々と発生、さらに深刻なのは、「マイナ保険証」に別人の医療情報が登録されるというトラブルも起きていることです。
 投薬や治療情報の取り違えは、命にかかわる重大な医療事故につながりかねないと、医療関係団体からは、保険証廃止方針を撤回し、現行保険証の存続と、マイナ保険証を利用するシステムの運用停止を求める声明が出されています。
 また、マイナンバーカードへの不信や情報漏洩の不安から、自主返納する動きが広がり、総務省によると、6月末までの累計で、約47万枚に達し、トラブルが相次いで明らかになった6月、1ヶ月間だけでも2万枚の返納がありました。
 市民の財産である個人情報を保護すべき本市として、マイナンバーカードの普及促進は止め、国に対しいったんカードの運用停止を求めるべきです。

 議案第6号「札幌市証明手数料条例の一部を改正する条例案」に反対する理由は、マイナンバーを使ったコンビニでの住民票等の発行手数料を100円減額し、区役所等窓口での発行と手数料に格差を生じさせるからです。
 本市は、区役所に「来させない」「待たせない」取組の実現を、コンビニ交付手数料の減額をする理由のひとつとしています。
 しかし、証明書の交付が必要となる市民にとって「世帯全員の記載があるものなのか。個人のものなのか」などを対面で確認してくれる、区役所職員の丁寧な対応が重要であり、まさに行政サービスと考えます。
 区役所に「来させない」という取組は、市民に向き合う行政サービスの意義の後退にもつながることから見直すべきです。
 マイナンバーカードの普及狙いともいえる、今回の条例改正は、カード取得が任意であるはずのマイナンバーカードの有無によって、公平公正であるべき行政サービスの手数料に格差をつけることになることから認められません。

 次に、代表質問で取り上げた諸課題について、申し述べます。

 我が党は、これまでも子ども医療費の拡充や、保育料・給食費の負担軽減など、子育て支援の拡充を繰り返し求めてまいりました。統一地方選挙前の昨年度は、各会派からも代表質問などで、子ども医療費無料化の拡大など、子育て支援の拡充について取り上げられ、市議会が一致して求める、重要項目となりました。まさに、市民からの大きな要望です。
 そうしたことを受けて、秋元市長は、「子ども医療費や保育料の無償化の対象」や「学校給食費の公費負担軽減」などの拡大を選挙公約に掲げました。選挙後初の定例議会で秋元市長がどう提案されるのか、市民から大きな期待が寄せられていたところです。
 しかし、このたびの我が党はじめ、各会派からの代表質問に対し、「財政収支を見すえ検討する」「必要に応じて協議してまいりたい」と、先送りの答弁にとどまったことは、非常に残念です。せめて、今議会で、具体的な時期や方向性、内容の検討を打ち出すことが必要でした。
 物価高騰が続いている折、あらためて、全国政令市で最低レベルになっている子ども医療費の無償化の対象拡大、保育料無償化の対象拡大、学校給食の無償化などを、早急に具体化し実施するよう、強く申し上げます。
 また、今議会で提案された児童会館等環境改善費の移動式エアコン設置についてですが、このたびの補正予算で、未設置だったミニ児童会館42か所に設置され、児童会館も含めた全てにエアコンが設置されることになります。
 しかし、市立の小中高校の中には、いまだ移動式エアコンすら設置されていないところがあります。まもなく始まる夏休みに間に合うよう、一日も早くエアコンを設置することと合わせ、未設置の学校施設にも早急に設置し、教育・子育て環境を整えるよう求めます。

 新型コロナ感染症対策について、市民の対策につながるよう、市内の感染傾向を示し、感染状況がわかる情報提供を求めました。
 7月5日の定点報告値では、一定点医療機関6人と上昇し、下水中のコロナウイルスRNA濃度を測定する下水サーベイランスにおいては、57,200コピーと代表質問時と比較して約2倍に増えています。沖縄県では、感染者が増え、「人手が回らず、診療制限せざるを得ない」「医療崩壊の瀬戸際だ」などの声が報道されています。これまでも、沖縄が先行して拡大し、その後、札幌市でも感染が広がるという経験をしております。本市においても警戒を強めなければなりません。
 ホームページだけではなく、市長の定例記者会見などでもっと幅広く、市民への情報提供と感染対策を促すことが必要です。また、医療機関や高齢者施設、福祉施設への対策を早期に取るよう求めます。

 「自衛隊員募集のための名簿提供」についてです。
 2021年、防衛省および総務省から自治体に、自衛隊への名簿提供について「住民基本台帳法上問題を生じるものではない」との通知が出され、本市は22年から、18歳と22歳の市民の情報を、これまでの自衛隊による閲覧から、「紙媒体」による情報提供に変更しました。
 「名簿の提供をしない場合、法令上の問題はあるのか」質問したところ、市長は「法律違反ということではない」と答弁されました。まさに通知は「地方自治法に基づく技術的助言」に過ぎず、本市の自衛隊への対応に、法的根拠は見出せません。
 本市は、提供対象となる市民や家族から自衛隊に提供されたくない旨の申し出があれば、提供をしない「除外申請」を受付けています。
 代表質問後、この受付期間を延長したところ、申請は7月9日現在177人になっています。昨年は2人でしたので、これは本人の同意もなく、知らないうちに情報が提供されていたことへの不信や警戒の現れだと考えられます。
 当事者や家族の意思を無視した名簿提供はプライバシー権の侵害にあたる可能性が高く、自衛隊への名簿提供は中止すべきと強く求めます。

 議案審査特別委員会では、総務局で、業務改革推進費について取り上げました。
 生活保護業務を対象とした業務改革推進費は、ペーパーレス推進により、事務負担を減らし、市民相談などの対応に振り向けていくことを目的としています。
 ペーパーレスによる効果の調査・分析や業務フローの検討について本市は、コンサルタントなど民間委託を想定しておりますが、個人情報保護については、最大限考慮されるよう求めます。

 まちづくり政策局では、公共交通システム検討費について質問しました。
 本市は、路面電車の3方面への延伸は、収支が悪化するので困難だとして、デマンド交通の活用を視野に、創成川以東地域における新たな公共交通システムの導入検討を進め、補正予算2,700万円が組まれました。
 レールのない乗り物で、定時性や速達性が解決できるのか、既存路線の利用者に不便が生じないのかを検討にあたって重視するよう求めます。

 スポーツ局では「藻岩山スキー場あり方検討調査費」について取り上げました。
 新規事業であり、ロッジとゲレンデの一体運営を行う新規参入事業者の有無について、調査をおこなうというものです。
 ロッジは公営、ゲレンデは民営という中で、リフト代やスキーレンタルなどの利用料が比較的安価なことや、多くの学校のスキー授業が行われることなどは、市民スキー場として大事な役割です。
 検討には、市民スキー場としての役割をいかに果たすかという観点を常に持ち、公的な関わりを継続するよう求めます。

 以上で、私の討論を終わります。